5月の例会の話題

4/28アサギマダラマーキング会

種子島の再捕獲個体

写真左)2002.4.28 鹿児島フラワーパークにて開催のマーキング会(中峯敦子女史撮影)
写真左)西之表市大崎での再捕獲個体
    大坪修一氏(榕城小教諭)が再捕獲したもの.
    放蝶者は中峯浩司氏で,5/4に南種子町の竹崎にてマークしたものです.(2002.5.5 大坪修一氏撮影)

 こんにちは.鹿児島昆虫同好会の例会係・庶務の金井です.
5月の例会報告をお送りします.
 例会開始前に15分間のNHK番組の録画をビデオで見ました.
福田晴夫氏が出演し,アサギマダラの移動とマーキングに関して解説されたものでした.
4/28のマーキング会の映像も出て,参加者には好評でした.

 今回は「鹿児島県版レッドデータブック(RDB)」と題し,鹿児島県環境技術協会の溝口信彦氏・福田晴夫氏に
お話を伺いました.A4サイズの資料を21枚と,非常に気合いの入った講演をしていただきました.
 以下の記録は金井が行いましたものです.文責は金井にありますのであしからず.

(1)政府のRDB作成
 H3に我が国初めてのRDBがとりまとめられました.
その後H4に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」が制定され,H7に政府策定の
「生物多様性国家戦略」の中で,種の多様性確保が必要不可欠と改めて認識された.
 全世界的RDBを作成しているIUCN(生物自然保護連合)でH6に,より定量的な評価基準に基づくカテゴリーが
採択され,これを受けた形で環境省もRDB見直し作業を開始した.
 見直しはまず各分類群毎にレッドリストを作成・公表し,これを基にRDBを編纂するという2段階で行われている.
レッドリストはH9より順次行われ,昆虫類はH12.4.12に公表された.

(2)鹿児島県のRDB
 国のRDB作成を受け,県単位でも作成するところが増え,九州では鹿児島県が最後に残った形になっている.
 鹿児島県ではH11から調査が行われ,H15春以降にRDB発表という予定である.
 鹿児島県のRDB作成には次のような組織が構成されている.
   1)検討委員会←(2)ワーキンググループ←(3)情報収集対象者←(4)現地調査補助員
   (1)には昆虫として福田晴夫氏,
   (2)には福田(チョウ・昆虫全般),山根(ハチ・ハエ類),江平(トンボ),二町(チョウ・甲虫),
      中田(熊毛全般),前田(奄美全般),溝口(甲虫その他)などが所属している.
 調査対象種の選定には,県独自の注目点などが取り入れられ,カテゴリーも県独自のものが採用されている.
その中でも「分布特性上重要」というものを取り入れた.
 これは南限種・北限種のように今後の環境変動によって生息が変化する可能性があるもので,
「貴重な種」であっても「希少な種」ではないものを取り入れた.この「分布特性上重要」な種の中にも,
地域個体群が絶滅の危機にあるものがいる
(たとえば紫尾山のフジミドリシジミなどは,ブナの伐採状況から見ても危険である).
このような『消滅』の危機にある生物も取り上げているのが,鹿児島県のRDBの大きな特徴のようである.

 例会ではH14.4月現在の対象種一覧が資料として出されたが,現在でも削除・追加が検討されているらしい.
福田先生の言葉を借りれば,「調べればデータが得られ,リストから外すべきものになる,矛盾がある」とのことです.
また,寄せられた情報量もリストに反映され,情報量が少ないと守るべきかどうか判定しにくく,
リストに入りにくいと言うことです.
 たとえば,チョウに関しては40種近くが現在リストに入っているが,ガは2種しか入っていない.
この点は今後改善されていくだろうと言うことである.

 最後に,昆虫同好会に是非注意してほしいと言う種が挙げられた.
1)オオヒョウタンゴミムシ:砂浜沿いの林縁などで見られるという話である.
       しかし,福田晴夫氏が種子島で学生時代に得たときには,
       チガヤの群落を開墾していたときに土中から出てきたと言うことである.
        また,鳥取砂丘ではスプリンクラーなどでできた穴に落ちていると言うことである.
2)ヒラズゲンセイ:真っ赤な3センチ近い甲虫で,目立つ.
         幼虫がクマバチの巣内に寄生するという.
        廃屋や竹を積み上げたところなどが狙い目で,これからの季節,
        特に梅雨の暑い日に飛来する個体を狙うと良いのではないかと言うことでした.
3)ゲンゴロウ・コガタノゲンゴロウ・スジゲンゴロウ
        水生昆虫は環境変化をとても受けやすい.特に各地の情報をとりまとめる必要がある.
       小さなため池などを調べてほしい.
4)海浜性ハンミョウ:砂浜の減少が大きい要因である.
         特に鹿児島湾内に昔いたものが全滅した(?)ことが大きい.
          たくさんは取らないで!!
5)内陸性ハンミョウ:コニワハンミョウ,コハンミョウ,アイヌハンミョウなど
         4月上旬,金峰町でミヤマセセリを探していたときに田んぼの脇に見られた(福田).
        探すことが非常に大切.

質問としては以下のようなものが挙げられた.
(1)リスト内に一つだけ,「生物群集:吹上浜」と言うのがあるが,これはどういう意味か??
  → たとえば,稲尾岳のように植物群落の保全が生物群集の保全に直結している場合は良いのだが,
   吹上浜にはそのような植物がない.にもかかわらず,ハンミョウ・バッタハチに関して,
   非常に希少なものが見られる.そこでこのような指定に到った.
(2)オオミノガが入っていないけど,どうなりますか?
  → これも情報量不足です.もちろん今年度中にもリストは変更があるが,
   県としては発行後も改訂を重ねていく予定でいるらしい.

と言うことでした.
「鹿児島県は九州で一番最後になったと言うこともあり,内容的にはどの県にも負けないような
しっかりとしたものにしていこうとしている」
と言う言葉に,非常に期待を大きくすると共に,
自分もヒラズゲンセイを探さねば!!と決意することでした.

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では,一人一話です.
金井) 高校3年担任で,天国から地獄に堕ちてしまいました.
    現在我が家にはSATUMAバックナンバーが段ボール40箱近くおり,発送準備進行中です.
   もう少しお待ちを........
    山川のカバマダラは有精卵,2令幼虫2匹,成虫♂♀などが4月から見られる.
   ♀は未受精を確認後,2週間後に再捕獲したら精包を腹部に確認した.
    志布志の林さんから,自宅でとれたオオミノガがたくさん羽化しているとの情報を得た.
   クヌギから得た個体は100%寄生されており,ヒバから得たものがよく羽化するとのことである.
    金井も鹿大・屋久島で得たミノから2♂が得られた.

溝口)職場で昆虫・植物を担当しています.
   今年はムシが非常に早く,ホタルやイカリモンハンミョウの調査をいつから行うか,非常に悩んでいます.

岩下)子宝島から来ました.6月中旬まで鹿児島市にいます.
   昆虫は島でも早いです.4月中旬にスジカバマダラ・ウスコモンマダラが目撃・採集している.

福田晴夫) 「川の生き物図鑑」が6月末に出版予定.3000円予定だが,6/8まで私に申し込めば2200円ですよ!!
   虫は時間不足かな??
    「琉球列島の蝶たち」が,沖縄の鳴き虫会から出た.楽しく読める本です.
    ウスコモンマダラは5月上旬に垂水(橋元紘爾氏)・鹿大農学部のスイゼンジナで得られている.
   スイゼンジナを見れば,チャンスは今ですよ!! 
    自宅のトラップにクロコムラサキが来た

廣森)ウスバキトンボが4/19に博物館裏に10匹以上いたが,今日はいない.どこへ??
   4/26宇治群島へ.アサギマダラは2匹目撃,トンボはいなかった.
      チョウ2種,カメムシ6種,イヨカズラにアサギマダラの食痕があり,2匹幼虫.
     ツルモウリンカには食痕が無かった.
   イラクサ科オオヤブマオにいつもフクラスズメとは違う小さなガの幼虫がいる.
   2年間気になっていたが,今年飼育してキシタアツバであることを確認.ホッとした.

成見)4月末・奄美大島へ
      リュウキュウハグロトンボ出始めであった.ベニトンボが市街地にまで入り込んでいる.
     早くて活発であった.オオシオカラトンボ目撃.アサギマダラが出ていた.羽化直後のような個体であった.
     ハブも見た.春だなあ.....
      今月は宮崎で九州トンボ談話会が開かれるので,行って来ます.

熊谷信晴)黎明館のヤナギには,今年はコムラサキ見られない.
     城山のツマキチョウは,昨年に比べて少ないが今年もいた.
     HDのクラッシュで,写真がパー!! またやる気を出さねば!!

塚田)入来峠のライトとラップでイボタガ,オオトモエ,クロシデムシなど.
   最近工事用のため池でクロスジギンヤンマの羽化失敗個体を発見.
  この種は自然状態の残った静かな池ではないですか??珍しいの?
              →(成見)この種の適応力は結構広いと思いますよ.
   川辺町の川沿いでニシカワトンボがいたが,5月2週目からはミヤマカワトンボが増えてきた.
    シオカラトンボ5/9初見.

中峯浩司)5/2から種子島・屋久島へ
      南種子では甥っ子の中峯清光君がスイゼンジナでマークを続けている.
     私もこの辺りで80匹ほどマークした.
      中種子・南種子竹崎ロケット展示場ではスイゼンジナの植裁が非常に多い.
     300ほどマークしたが,そこで喜界マークの個体を再捕獲した.
     これは3/1に喜界福島さんがマークしたものであった.
      屋久島では北にある小学校で探したが,スイゼンジナが少しで20頭前後であった.
     一周道路ではノアザミが非常によく咲いているが,一匹も来ていない.イイギリの花が満開で,
     これで2~3頭見た.
      白谷雲水峡では3雌,全て交尾済みの雌であった.キジョランは多く,2令1匹.
     屋久島では北上せずに山を登る個体も多いのかもしれません.
      カバマダラは屋久島・種子島共に見られず,トウワタにも食痕のない.

中峯敦子)屋久島はヨメを離れて勝負でした!宮之浦港で大坪修一1♂目撃(笑)!!
    ジャコウアゲハの1化目を,白谷雲水峡の高度で見た.
     栗尾の小学校で,ハボタンがモンシロチョウに食害されていた.東谷山小学校では見ない光景でびっくり.
   (質問:福田晴夫)白いハボタンを食べた幼虫は白い??
     →ミドリの普通の幼虫でした.
    福田→このチョウは,進化の過程で花びらを食べるようにはなっていないね.
       シジミのように花弁を食べるものは,色が変化するけどね.

早川美保子)息子が川辺町で畜産の仕事に従事.仕事場でよくチョウがくるそうだが,仕事中で採れないらしい.
      5/10(今さっき)鹿児島市でホタルガ1匹採集
     カラムシでヒメアカタテハを飼育中です.ラミーも2匹採りました.

最後に話題としてキオビエダシャクの様子が話題になりました.
廣森)4/29に指宿でキオビエダシャク3匹目撃
金井)4/28マーキング会に行く途中,喜入町生見で1匹飛んでいた.
   これより北では見ていない.山川町ではたくさん飛んでいる.
中峯)種子島では一昨年・去年大発生!!今年は1匹も見なかった.
   聞いたところ,町で駆除を呼びかけ,大規模に行ったようだ.
岩下)子宝島では,2年前に大発生したが,昨年はチョロチョロであった.
   今年は見ていないうちに鹿児島に来た.

以上です.
 6月1に発送予定のアルボを現在作成中ですが,会計報告,簡単な予算,博物館訪問,虫屋の話題などを考えています.
どうぞお寄せ下さい.

 前回のSATUMA125号に振り込み用紙をつけたところ,みなさんよく振り込んでいただけたようです.
ありがとうございます.ただ,今回の用紙はこちらのミスで手数料関係で少し郵便局でもめるようです.
大会でお渡し・発送するSATUMAには,訂正した振り込み用紙を同封する予定です.
是非そちらをお使いになるか,郵便局でもらえる用紙をお使い下さい.


では.

金井賢一  viola-kk@po.synapse.ne.jp

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