4月の例会の話題

3/9三重岳ナイター

ツマキチョウの吸蜜

写真左)2002.3.9 三重岳におけるナイター(春のガ)採集風景(2002.3.9:福田輝彦氏撮影)
写真左)ツマキチョウの吸蜜(2002.3.23 指宿市:福田輝彦氏撮影)

 4月例会は,中峯浩司氏による「アサギマダラのマーキングによる成果」ということで,
昨年までの記録の変動や,今年の注意点などをお話しいただきました.
 なお,今回は本文を演者の中峯氏に校正いただきました.ありがとうございました.

まずは事務連絡を.
 4月になり住所変更が多い季節です.是非ご連絡下さい.
 また,5/15〆切で,アルボを編集しています.みなさんの原稿をお待ちしております.



1)全国的な動向
 2001年の移動記録は全国で213例,うち100km以上の移動は152例.
マーク総数は前年に比べて少なかったか?各地で少なかったとの情報あり.夏~秋,紫尾山も少なかった.

 南西諸島への移動は50例,そのうち37例は喜界島.
参考までに,喜界島が注目されたのは1999年に12個体再捕獲されてから.2000年は49例.

 台湾への移動が初めて2例確認された.
 大阪→台湾南部,長崎→台湾北部

 なお,移動例の数は徳島博物館の大原氏からいただいたデータベースから検索したものである.

2)県本土に関する記録

喜入町千貫平(6/9

東市来町(7/4

中峯マーク

徳島県(10/5

開聞山麓(11/13

中峯再捕獲

山川町鷲尾岳(10/30

喜界島(12/9

藤本良一氏マーク

開聞山麓(11/12

喜界島(1/9

中峯マーク

開聞山麓(11/14

喜界島(11/21

中峯マーク

内之浦(11/4

西表島(11/20

若松武徳氏マーク


 県外からの移動確認は2000年比良山→開聞山麓についで2例目.
県本土から喜界島への移動は初めて.それも3例もあった.

3)開聞山麓に集まるアサギマダラ
 春は蜜源のあるところでないと見つからない.
 秋は10月に入ってから見られ始めるが,多くなるのは11月から.

 南下時期の初期には雄が多いが,後期には雌が多くなり,明らかなピークのずれがある.
 以前沖永良部で調査したときにはマーク数の変化に雌雄の差は見られなかった.
 雌は途中産卵しながら南下してくるので雄に遅れるのか??

 鮮度に関しては,11月上旬から中旬にかけてボロな個体が多数見られる時期があるが,その後急速にいなくなり,
12
月に見られる個体は新鮮~中破になる.これらの個体は本州から?の南下集団の本流ではないか.

 因みに,1月中旬までは成虫がチラホラ見られるが,2月には成虫がいなくなり,4月に入る頃に越冬個体が羽化し始める.

4)長崎から喜界島への移動
 2001年,長崎から喜界島への移動は4例.小宝島に1例.沖永良部島に2例.
鹿児島県本土からの移動3例も合わせると10頭もの個体がほぼ北から南へ移動している.
 一見九州西回りコースがあるように見えるが,その前の2000年までに長崎からも鹿児島県本土からも再捕獲がなかったのはなぜか?
1999年も2000年も,長崎県でも開聞山麓でも相当数マークされていたのだが.理由は北向きの風が長く吹いた時があったのではないか?
風のデータを分析してみる必要がある.
 また,秋に喜界島で1000匹以上?マークしているのに,喜界から南下する記録は全く得られていない.これも風の影響か??

5)今春のマーキング情報について
種子島南種子(中峯清光):3月中旬から採れはじめた.現在200頭以上.多い日にはスイゼンジナに4050
喜界島(福島誠):3/31までに1444匹.昨年秋にマークした個体が,まだいる!
        喜界島ではサクラランの新芽にアサギマダラが発生しているようです.
         因みに2001年は春に4497匹マークされているが,再捕獲されていない.

6)新たな記録の整理
 2000年11/12に種子島で捕獲された「OKD V920 ミクニ」は,11/3に鹿児島県池田湖で捕獲されており,
種子島での捕獲は再々捕獲であった.


*発表では「アサギマダラの移動は風次第ではないか??」という論調であった.根拠はいくつかある.
・ 2000年に採った台湾からのアサギマダラは春の北上移動と言うよりは迷蝶と同じではないか?
 マークされた6月中旬にはすでに南西諸島ではアサギマダラはほとんど見られない.
・ 同じ年,8月上旬に南薩の浜辺で3頭採った.この前日に台風が九州西海上を北上している.
・ 春に種子島を南下した記録や,種子島から屋久島に移動した記録もある.
・ 北上個体が再捕獲されない理由の1つに,高気圧と低気圧が交互にやって来て風が一定方向に吹きにくいことがあるのでは.


 以上が中峯さんの発表の内容でしたが,他にも色々と意見交換や質問がされました.
福田晴夫)アサギマダラは15℃~20℃の涼しいところで生活するチョウである.
    春から夏にかけての移動は,記録が少ないが非常に面白いのではないか.
   ・ 台湾では海岸部と山間部で移動しながら涼しいところへと移動している.
   ・ 困るのは南西諸島で,高い山に避難することができない.
    3月から羽化し始めたアサギマダラはツルモウリンカなどで世代を重ね,
    5月以後の暑い季節を乗り切るために北上するのではないか?
   ・ 南九州本土では,2~3月に幼虫・蛹であった個体が4月から羽化する.
    この越冬世代が北上移動するかもしれないが,この世代が南九州で産卵した第1世代が6月ぐらいに成虫になる.
    この両世代の移動が区別できていない.
   ・ おそらく夏は涼しい木陰や沢などの「避暑地」と,吸蜜源の「食堂」のバランスがとれたところを求めて移動するのではないか?
   ・ 移動の要因として「日長」「気温」「花」「食草」「(卵巣未発達による生殖)休眠」などが考えられる.

廣森)秋に諏訪之瀬島ではツワブキなどに全くアサギマダラがいなかったが,隣の平島では非常に多いという話を聞いたことがある.
  わずかな距離の違いなのになぜこんな違いがあるのか??
 →(福田晴夫)もしかすると集団での南下移動なのかもしれない.

金井)開聞岳ではマークした個体が長く居座ることは無いかのか?
 →(中峯)3日~1週間,時には1ヶ月ぐらいの個体も見られる.もちろん,0日のものも多い.
金井)開聞岳で新鮮な個体が12月から増えているのは,近辺で羽化したのか?
 →(中峯)頴娃町では11月に卵や若齢幼虫が見られたが,これらは年内に羽化することはできず越冬世代となる.
   金峰山などの山で夏頃産卵された個体が,混じっているのではないか.もちろんもっと遠くから移動してきた個体も考えられる.

【今後の調査方針】
(1)冬に県本土で卵・幼虫で生活した個体が3月頃にどれぐらいいるのか.今年はキジョランが高くて確認しそびれた.
(2)喜界や種子島から春に北上する個体は,一気に海を越えて四国や関西に行っているのか?
  それを確かめるには大隅半島太平洋側~都井岬辺りを調べる必要があるのではないか??
(3)長崎から喜界へと移動した個体が昨年いたが,海を一気に越えたのか,それとも陸地を使って南下したのか.
  野間岳付近を調べることによって面白い情報が手にはいるのではないか??

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では,一人一話です.
福田晴夫:コツバメに関して
      昨年中峯氏が発見された錫山のコツバメを調査した.
     人家の庭のアセビを利用しながら,しっかりと生きているようだ.アセビとの結びつきに注意して南薩を探してみた.
  (金峰山)アセビ見られない(→山頂に2本ありますよ!:中峯)
  (亀ヶ丘)アセビ多いが,成虫見えない.花が多くて卵は探せない
  (郡山市八重山)アセビは人家の庭
  (千貫平)アセビ無い
   鹿児島市内(梅ヶ淵付近?)で古い記録がある.市内のアセビも注意してみる必要有り!
   3/30 亀ヶ丘でウスバキトンボみた.早い!

金井:今年は3年担任でした.
   金峰町のミヤマセセリを福田先生と探した.山頂にコナラの大木が残り,麓にクヌギ林のある良いところはたくさんあるが,
  ミヤマセセリは見られない.コツバメの卵を初めて発見.現在飼育中です.
   3/30,山川山下墓地で終令幼虫1匹と白い卵1個見た(卵は本当かな?).これから4月から5月にかけての卵・幼虫は,
  越冬世代が残したものです.これがあるのか,それとも越冬世代は途絶えて南からの流入個体を待つのか,非常に面白いところです.
  みなさんもトウワタに注意してみてください.

田中洋:昨年蛹化したツマキチョウが,3/23に羽化した.一年の休眠だった.
    3/30鹿児島新照院でカワトンボ♀を初見.
    春の蝶の記録を集めています.SATUMAに記録用紙を挟みました.是非!!

佐々木会長:久しぶりに郡山町八重岳に行った.今月はもう2~3回行きたい.

藤崎健:NHK鹿児島でディレクターしています.
    アサギマダラの移動に,個人的にも興味あります.マーキング会にも参加させてください.

廣森3/26山川でカバマダラ見られなかった.
   4/1(場所聞き逃し)ウスバキトンボみた.
   4/4国分で羽化した直後のダビドサナエ見た.博物館にも標本あるが,こんなに早い個体はない.
  どうなのかな??
   宇宿町の重信さんからの情報によると,昨年12月末に孵化したカバマダラ幼虫が,
  庭(野外)で3/31蛹化した.

中峯敦子:吹上のジャコウアゲハを今年も頑張ります.
    3/30,食草近くの桜では230頭の成虫が吸蜜していた.卵も2個発見.
    今年は吸蜜植物の季節変化,化性,6令幼虫になるのか,などを飼育実験もしながら手がけてみたい.
    3/30の吹上でウスバキトンボ2exs.ハルゼミ1ex.鳴いていた.

神園香:3月下旬に紫尾でヒオドシチョウの♀を狙いたかったが,事情で実施できなかった.残念.
    秋に産卵させたヒサマツが,今孵化している.楽しみです.

中峯浩司:アサギマダラマーキング会は4/28に行います.
    入場料は年間パスポート(1000円)で,何度でも入れるようになります.
     4/1打ち合わせに行ったところ,アサギマダラ1ex.目撃.
    1月にリュウキュウアサギマダラがいたとの話があったので期待していたが...
     4/2山下墓地でカバマダラの白い卵を10発見!!
    1個の卵の周りを卵寄生蜂Trichogramma sp.らしきものが歩いていた.
    カバの雌らしきものを,振り逃がした.
    (福田:有精卵だろうか?→中峯2卵持ち帰っている)
     昨年ツマキチョウが多かった山川町川尻のジャニンジン群落が,今年は非常に少ない.
     飼育していたコツバメの蛹,木場岳(大隅)で採ったキリシマミドリの卵,共に失敗したようだ.
    悔しい!!(キリシマの卵は大丈夫かも:神園)
     住所変わりました.SATUMAの裏表紙見てください.

福田輝彦:三重岳の夜間採集会は運悪く晴天で,気温1℃になった.
    個体数は少ないが,春の蛾は一通り集まった感じである.
     昨年12月に寺山でのアサギマダラから採卵したものが2/24羽化した.早かったがマークして放した.
     来年の九州蛾類談話会,会場は指宿を考えています.
    グリーンピア指宿が経営破綻のようですが,どうなるかな??5月に予行練習してみます.

早川美保子:息子信義は川辺に就職・転居しました.
      3/10鹿児島市西野谷でアケビコノハが来た.(成虫越冬だが)びっくり.
      3/30錦江公園でアオバセセリを採りました.
      4/2城西でミカドアゲハ採集しました.
      4/5西野谷でシオヤトンボ採集.

以上が一人一話です.
他に
・ 自宅庭のクーラー室外機で,2月後半にカバマダラが蛹化→羽化したと生徒の保護者から情報有り.
・頴娃高校内のカバマダラ終令幼虫は,3月中旬にいなくなってしまった.
 (飼育すると,0℃になると幼虫はトウワタからポトリと落ちます:神園)
・キオビエダシャクは越冬しました??
 →3月には頴娃町などで蛹とれた.
  今現在頴娃町~山川にかけて成虫飛んでいる.
  4月上旬,開聞岳ふれあい公園では古い成虫個体が得られた.
  昨年は,吹上でもイヌマキに被害があったと,園芸業者から聞いた.
などの声がありました.

さあ,フィールドの季節到来ですね.
SATUMA
を年3回発行にしましたが,原稿が集まらなければ出せません.
会員のみなさま,是非是非眠っている記録を起こして,活字にしてください.
アルボもご意見,報告文,PRなど大歓迎です.
ムシやムシヤの話題もどんどんお寄せ下さい.

では.
金井賢一  viola-kk@po.synapse.ne.jp

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