3月の例会の話題

ムラサキツバメ

キオビエダシャク食害

写真左)ムラサキツバメ集団越冬(2002.1.10 犬迫:福田輝彦氏撮影)
写真左)キオビエダシャクによるイヌマキの食害(2002.2.23 頴娃:福田輝彦氏撮影)

 20023月の例会は3/2,「微小蛾の世界」と題して,鹿児島大学農学部の坂巻祥孝氏にお話をしていただきました.
北大の院を出られた坂巻氏に,微小蛾の研究史,博士論文でどのような研究をしたのか,
などいろいろなお話を伺うことができました.
 鱗翅目を上科ごとに並べると,その種数の約半分に研究者が「小蛾類」とするものが相当する.
ヒロズコガ上科,スガ上科,キバガ上科などあり,坂巻氏はキバガを専門にしていた.
小蛾類の研究は,現在も続々と新種記載などが行われている.
 1959年の北隆館昆虫大図鑑では小蛾類751種,うちキバガ上科33種が掲載されていた.
その後1982年の講談社蛾類大図鑑では小蛾類2049種,うちキバガ上科71種に増え,
2000
年のPost MJでは小蛾類2561種,うちキバガ上科143種と増えた.
しかし,(坂巻氏も未記載種を抱えており)今後も必ず研究は進む分野である.
因みに,ヨーロッパの1913年に発行された図鑑には,北隆館以上のものが記載されていた.
 羽の模様は非常に繊細で,鱗粉が少し剥がれると模様が変化してしまう.
 そのため小蛾類の採集にはネットはほとんど使わない.
完品を得るために,植物に穿孔した幼虫を採集するところから始まるからだ.

 少し変色した植物をジップロックに入れて持ち帰り,蛹を大事に羽化させる.
アンモニアで殺した後,実体顕微鏡下で展翅する.
(実際に展翅板状の標本を回していただいたが,非常に感動する小ささ・繊細さである)
 なお,ハチに似ているスカシバなどの幼虫は朽ち木内で見られるらしい.
甲虫屋さんがよく材採集から寄せてくれるとのことであった.

 博士論文されたことはキバガ科の羽の形に分類形質は認められるか,という点と羽の形(特に縁毛部)が
どのように形成されるかという点であった.
 専門的なところは難しかったが,縁毛部を支える細胞の顕微鏡写真や縁毛部の蛹時の成長過程など,
非常に興味深い画像を見せていただいた.

質問では
「アンモニアはどのような濃度で使うのか?」
    →教材店で販売する30%をそのまま使う.死後硬直が起こらないが,色素変化や仮死状態に気をつける
「縁毛部は水に落ちたときの影響はどう?」
    →水への影響は縁毛を持つ羽と縁毛のない羽との差はないと思う.
      むしろ,羽のたたみ具合には縁毛部の方が有利かもしれない.
などがあがった.

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では,一人一話です.
金井:南薩のカバマダラは,山下墓地で卵がなくなってしまった.
   2/26にはスプリングエフェメラルを求めて南薩を回ったが,見られなかった.

福田晴夫:志布志町でオオムラサキの幼虫が採れたという情報があったが,やはりゴマダラチョウであった.
   最近ススキに造巣しているセセリを見ているが,ほとんどチャバネセセリでイチモンジセセリは2匹しか見つからない.
  秋にはかなりの産卵をしているはずなのだが...もしかすると,本州の移動のように面白いことをしてるかもしれない.

田中:春の蝶の記録を集めましょう.

塚田:2/2627奄美大島に行って来ました.リュウキュウアサギマダラ,ウスキシロチョウ,カラスアゲハ,モンキアゲハ,
  ムラサキシジミなど見られた.暖かくなっていた.
   紫尾山でオオクワガタが採れたという話,知っていますか??(詳しい情報は知らない.月刊ムシ??)
   ホタルの若令を飼うためにカワニナの飼育を試みるが,難しい.
         (小さなカワニナが手に入らない場合,カワニナをつぶして与えるといい)

林 :志布志の実家のガを調査しながら3年目,小さいものにも手を出し始めました.
   小さいシャクトリムシをこの冬見てたが,羽化が始まった.
   オオミノガ,昨年寄生されてヤドリバエの囲蛹が入っているミノの中で,メイガの幼虫・ハチの幼虫を手に入れ蛹化した.
  (写真見せていただきました)
   イボタガが2月中旬から羽化し始めた.
   クロメンガタスズメガの幼虫が,冬に餌も採らずに食草を降りてウロウロしている.
   春の蝶の記録多数披露.(メモとれなかった)
   カワゴケソウが志布志にあるが,町にムシの調査を依頼された.カワゴメミズメイガを調査するのも,寒そうだなあ.....

松下:ガの採集をしようと思っていましたので,来週の採集会,楽しみです.

中峯:SATUMA125の原稿,〆切は3/15です.よろしく.
   カバマダラの幼虫が頴娃高校内で356頭ほどいる.
   2/25,大隅の木場岳にキリシマミドリの卵採集に行きました.42卵採れたが,1本の木に集中している??
   佐多辺塚に行き,ルリシジミ45頭,キタテハ,モンシロチョウみれた.

木佐貫:モンシロチョウ初見は2/17(鹿児島市自由ヶ丘).昨年は2/11で,変化は少ないか??

清水:ツマベニの蛹を野外で採ってきたところ,雌雄型が羽化してびっくり!!

福田輝:2/10,来週の下見に三重岳に行ったが気温0度,1匹しかこなかった.
    12/9よりムラサキツバメの集団越冬を犬迫で観察・4日あけずに写真を撮った.2/28迄にとうとう5頭になった.
    2/23開聞町でキオビエダシャクの加害により丸坊主のイヌマキ有り,蛹と成虫が見れた.
   蛹も羽化直前で,家に持ち帰ってすぐ羽化した.

山下秋厚:アサギマダラの再捕獲データをグラフ化した.
    非常に面白い傾向がある(来月を乞うご期待)!

廣森:川の生き物図鑑作成中です.
   3日前,博物館に海外のカブトムシを調べたいと持ち込まれたら,タイワンカブトであった.
  調べたところ,フェリー喜界の甲板で採れたということでびっくりした.

石田:アオサを仕事で栽培していますが,ヤマトイソユスリカというボウフラが混入し,消費者から苦情が上って困っている.
  どなたかユスリカの専門はいませんか??

池田:東市来の庭でカバマダラを見ていたが,今年も今日までに全ての幼虫が死んだ.
   畑に植えたハルニレが,親指程度の太さから10年で80センチの太さになった.
  道路拡張で切られるかと思ったら,近所の公園に植えてもらえるとのこと.

松比良:宇治群島の情報などを与えてくれていた檜物さんが亡くなられた.非常に残念である.
    村岡さんから,SATUMAの表紙・アルボのカットを頂いた.楽しみにして!!

湯田平:埋蔵文化センター(姶良)付近では,2/23-24にキタテハ・モンキ・モンシロ見れた.

早川信義:八重山公園で,一本の木からチャミノガ1本に2030個付いていた.

早川美保子:2/28昨年中峯さんからもらったカラスアゲハの蛹が羽化した.
     最近シャクガが家に飛来する.

以上でした.

現在迷蝶の記録の総括をしています.
2001
年の記録で報告しそびれているもの,是非是非お寄せください.
では.


金井賢一  viola-kk@po.synapse.ne.jp

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