10月の例会の話題
例会の報告の前に,連絡をいくつかします.
【1】11/23に鹿昆大会が催されます.現在係の田中洋氏・中峯浩司氏が中心になり,企画しております.
是非話題提供をお願いします. 話題提供を希望される方は金井 または中峯氏までメールでご連絡下さい.
【2】現在アルボを編集中です.
11月はじめに大会パンフレットと共にお送りできるように奮闘中ですが,是非ご意見・原稿をお寄せ下さい.
〆切は10月18日でお願いします.
では,例会報告です.
今回は二町一成氏によります「リュウキュウムラサキ研究の現状と最近の話題」と題しまして,お話しいただきました.
今年夏に沖縄での2年目のチョウチョウの日に併せての講演会で講演されたものを,鹿児島版として
話題を追加してお話しいただきました.
主な話題は次のようなものです.
1)日本での最初の記録は?
2)雌雄での色々な型の存在
3)飼育によるF1個体の変異
4)昔と現在での地域によっての斑紋の変異
5)異常性比と間性はボルバキアの関与?
6)これからの調査の問題
このようなことについてお話しいただきました.
1)大英自然史博物館の所蔵標本に琉球のラベルのフィリピン型の標本がある。これが日本での初記録か?
昔の外国の文献にフィリピン型の分布域に琉球が含まれるのは、これらに起因するようだ。
ザイツや東南アジア島嶼の蝶など外国、日本の図鑑に掲載されている本種には型名や亜種名の間違いだけでなく
雌雄の間違いなどが多々見られる。中には間性個体と思われる個体もあるが正常な雌雄として図示されている。
とにかく多くの雌雄の変異と,そして間性の存在と,一般に入手できる文献で本種を理解できるものは現在無い。
2)フィリピン型,台湾型,大陸型,海洋島型,赤班型と様々な方があるが,これらの分布域が変化しつつある点は
注目に値する.特に赤班型の分布域の拡大は昔と現在の標本を検証する必要がある。
3)飼育個体の変異の研究は,以前から研究されていた.
1970年代までは,日本において野外でフィリピン型♀を捕獲採卵しても,未交尾で卵が孵化しない場合か、
次世代が生じても台湾型もしくは、その中間型が出てきて、しかも羽化個体のほとんどが雌だった。
日本に飛来した後に,台湾型の雄と交尾したのではないかと考えられる.
このようなハイブリッドの研究は既に,イギリスのクラーク&シェパード両博士により,
イギリス連邦の世界各地からの個体において数多くなされて,報告されている.
日本周辺のものはこれらのデータにはほとんど入っていないが,各斑紋の遺伝は大半は一致するが、
以前の日本でのデータと両博士の結果をじっくりと検証する必要もある。
1980年代半ば頃から,飛来したフィリピン型からフィリピン型の子孫が得られるようになったようだが、
この頃からフィリピン現地で何かが変化があったようだ。
日本での迷チョウとしてもフィリピン国内でも♂は現在では普通になったが何が原因か?.
4)昔は間性はいなかったのか?,昔からの地域の型の変遷が分かるのではないか?、
それに世界のリュウキュウムラサキはどれくらいの斑紋変異があるのかと言うことで,
各地の博物館や大学のリュウキュウムラサキ標本を見てきている。
それらは現在検証中であるが、間性らしき標本は1~2個体疑わしい個体があったが、
ほとんど過去には存在しなかったようだ。
5)以前の飼育で♂が出ずに雌ばかり羽化していた理由が、最近ボルバキアと言う細菌によるものだということが、
まだ正式な論文は出ていないがほぼ明らかになりつつある。
6)今後の問題点として,次のようなものが挙げられる.
・ 野外での食草は何か?:飼育幼虫では非常に多種多様なグループの植物を食べる潜在力がある.
「雌が産卵する」「幼虫が食べる」と言う点において,実際に外国の現地や野外で利用されているかどうか
確認をしていくことが必要である.
・ 南西諸島においては,1・2月に越冬していないか確認する必要がある.
・ 飼育記録や採集記録の集積は,今でも必要なことである.
特に最近は出されることが無くなっている飼育結果についても,しっかり出そう.
昔は交雑F1では♀しか羽化しない場合がほとんどだったが、今では正常に雄雌羽化するので、♂の型も♀とリンクさせて
解明できるようになった。
・ 毎年割合記録されている大陸型はどこから飛んでくるのか?
台湾対岸かその周辺の中国大陸に安定した供給地がある筈だが・・・・・。
・ ボルバキアの影響は,また出るようになるのか?
・ フィリピンではボルバキアはいなくなったのか?
・ 型(フォーム)の標準図鑑を作ることが必要ではないか?
毎回記録をカラーで発表しなくても,「図鑑何番のような個体」という指定ができるぐらいのフォーム標準図鑑の発行を
福田晴夫氏と検討中である。
以上のようなお話しでした.
質問としては,
「日本に飛来するほどの移動能力を持ちながら,地域ごとのフォームを持ち続けられるのだろうか?
次第に遺伝子混合が起こり,ハイブリッドばかりにならないのか?」
→ これは非常に面白く,大きな問題である.
日浦さんは次のように考えられた.
(1)原産地アフリカから移動分散する時代があった.
(2)分散能力を失う時期があった.このときフォームが形成された.
(3)現在また分散能力を持ったのではないか?
「マダラチョウへの擬態も関係しているのではないか?」
→ ♂♀のバリエーションとマダラチョウのバリエーションを集めて解析する必要がある.
「フォームによって食草が異なるようなことはないのか?」
→ 型でも多少あるようだが、個体でも好き嫌いがあるように見える.
サツマイモが日本では有名だが,サツマイモ自体は南アメリカ原産の植物なので,野外利用とは考えられない.
日本での飼育でサツマイモに全く興味を示さず産卵せず、他の食草では産卵したという例は多い。
またサツマイモを食べない一齢個体も割にある。
日本でのキンゴカ(アオイ科)への野外産卵は,おそらく福田晴夫氏が目撃した一例のみではないか?
やはり野外での観察が非常に大切である.
リュウキュウムラサキは私が初めて採集した迷蝶でもあり,非常に興味深いお話しでした.
特に,どんな飼育実験でもその結果を発表する必要があるということに,大変勇気を持ちました.
みなさんも是非ご意見をお寄せ下さい.
では,一人一話です.
金井:最近カバマダラを見に南薩に行くことができなくなりましたが,9/5鹿児島市内で非常に多く見られるように
なりました.紫原のトウワタにも終令幼虫を1匹採集することができました.
寄せられた情報では,川辺の児島さんのお宅でもたくさんの幼虫が得られたそうです.
小学校の校長先生に差し上げたそうです.
また,熊本県玉名市の松井英司さんからも,自宅で採集できたとの報告をメールで頂きました.
種子島の大坪さんからは以下のような内容のメールを頂きました.
・カバマダラ:非常に少ない
・アオタテハモドキ:北部で1♀採集
・ウスキシロチョウ:中種子のナンバンサイカチで発生中
・リュウキュウムラサキ:種子島北端で1♂
・タイワンツバメ:西之表市の南部と北部に,少数個体群ですが広く分布しています.
・ウラナミジャノメ:西之表南部で数頭採集しました.♀に産卵させたので,飼育しようと思います.
福田晴夫 ホシボシキチョウ:曽木の滝にて2匹採集.幼虫は全てツマグロキチョウでした.
牧ノ原演習場,志布志はカワラケツメイあるがホシボシキチョウいない.大隅はいないのか??
坊津は食草が見つかりませんでした.
田中洋 ウスキシロチョウ:指宿にて7/21~見られている.発生量は少ないが,例年のデータと比べて増減面白い.
秋葉さん 後翅の白いカバマダラ:本日生見で白い♂+普通の♀の交尾を採集.ネットで離れたが,受精卵が出るかな??
清水さん ウスキシロチョウ:9/10開聞山麓3匹
ホシボシキチョウ:9/21より毎週行っています.産卵させようと思います.
井上さん ホシボシキチョウ:産卵準備中です.
これからはヒサマツの採卵やリュウキュウムラサキの飼育をしようと思います.
今村さん コバネアオイトトンボ:大口で産卵写真を狙っています.やっと今日,♂♀の交尾,産卵を見れました.
熊谷正弘さん アマミウラナミシジミ:錦江湾公園3♂採集.結構多い.
カバマダラ:荒田小学校で2成虫,3蛹,3幼虫目撃
アオタテハモドキ:10/5荒田小学校で1♂採集
早川さん リュウキュウムラサキ:8/10吹上正円の池1匹.9/23 1♂
リュウキュウアサギマダラ:1♂
ヤシオオオサゾウムシ:川辺平山ではフェニックス20本中2/3位が被害にあっている.
福田輝彦 オオタバコガ:ナス科ルリマツリにて幼虫が手に入ったので,肉食するかどうか試してみた.
しゃぶしゃぶ用の豚肉を入れると,すぐに近寄ってかじり始めた.飲み込んでいるかな?
足をなめるところが非常にかわいい仕草である.
カワゴケミズメイガ:鹿児島市三重岳でとれた.しかし皆与志川や川田川汚い.
→ 頴娃町の馬渡川や志布志の安楽川では汚いところにカワゴケソウが生えていますよ!(福田晴)
坂口さん メスアカムラサキ・アマミウラナミシジミ:川内で目撃しました.
塚田さん:ウスイロコノマ:鹿児島市吉野の自宅で果実トラップしかけています
9/18(1♀)9/19(1♂)9/20(1♀)9/21(1♀)
ミドリヒョウモン:9/30溝辺町竹子1♀採集
先月のエゾスジグロシロチョウ(?):スジグロシロでした.発香鱗を×300で見ると,分かりました.
終鳴記録:アブラゼミ9/19(吉野)ツクツクホウシはまだ聞きます.
渋谷さん カバマダラ:川内久見崎は多い.公民館には20数個下がっている.
99年も多かったが,今年はそれ以上に多い.
ホシボシキチョウはいないです.
中峯浩司 アサギマダラ:9/22紫尾にてマーキング会.100匹超える数できた.
11/10開聞山麓にてマーキング会予定です.
ホシボシキチョウ:錫山で発生.10匹採集,幼虫もほぼホシボシでした.
今はいません.宮之城の二渡にて1匹採集.開聞山麓いない.
カバマダラ:生見で採集した1齢幼虫→9/23に後翅の白い♀羽化.交尾しないので産卵させられない.
二町さん:アオタテハモドキ:串木野で野外終令幼虫1匹採集→今蛹です.
ホシボシキチョウ:串木野荒川にて1♂採集→翌日1♀.採卵すると有精卵でした.
ツマグロキチョウの幼虫と比較すると刺毛の長さが違うのでは?
キオビエダシャク:10/2串木野 10/5伊敷公民館近く
安山くん カバマダラ:蒲生小にて成虫1匹・幼虫採集
神園さん ホシボシキチョウ探しています:串木野荒川にて1匹.
南薩指宿スカイライン沿いの食草には,いない.
開聞山麓いない・ツマグロキチョウ1♂
ウスキシロチョウ 枕崎の息子宅ナンバンサイカチ,8年前から一度も来ない.
松比良さん 今日は大口でした.
コバネアオイトトンボ:大口のその場が南限である.日本固有種でもある.
産卵の映像を撮りたいのだが,10月上旬が季節なのか?
廣森さん カバマダラ:博物館のトウワタに2年ぶりに来ました.
ホシボシキチョウ:9/20なし→その後2頭採集.幼虫を採集して今蛹.どっちだ??
ヤシオサオオゾウムシ:喜入前之浜にて9/24飛んできた.
9/10枕崎花渡川1♂目撃.坊津10♂6♀ 妹尾さん
山下秋厚 マダラバッタとヤマトマダラバッタの比較を図示(プリント配布).
後翅の青いラインがヤマトマダラの特徴.
前翅の中央に黄緑のラインが入るとマダラバッタの特徴.
今日はフタホシコオロギ持ってきました.冬は暖房必要ですが,どうぞ!
熊谷正弘 ホシボシキチョウ:9/16錫山にて2匹.喜入にはツマグロキチョウのみ.
9/23 10頭とれました.たくさんいました.この辺で,飛んでいるときにキチョウと
区別が付くようになりました.
9/28錫山の金峰町側にはいませんでした.
産卵させました.誰か接写してください.
ウスキシロチョウ:10/5 生見1♀
アマミウラナミシジミ:10/5指宿国民休暇村多かった.
カバマダラ:皇徳寺のトウワタにはきません!!
江平さん コバネアオイトトンボで大口に行っています.
現在個体は林の薄暗いところにおり,産卵はこれからでしょう.
山地性の,植生のある浅い池で是非新記録を狙ってください.
目が青くてきれいです.アオイトトンボも記録が少ないです.
グンバイトンボ:終見は9/22の調査.10月にはいるけれども少ない.
谷さん 最近は魚見・開聞へ
9/8 メスアカムラサキ1♂ ウスキシロチョウ
9/28~ホシボシ狙っています.3匹採集.
生見でリュウキュウムラサキ1♂.
守山さん 鹿児島県で,まだ行っていない有人島は7つあります.
今年は減らしていませんが,早く行きたいです.
金井賢一 viola-kk@po.synapse.ne.jp