9月の例会の話題
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今月の例会は,福田晴夫氏による「中国(上海・福建省)の蝶類視察談」と銘打ち,
スライドおよそ250枚による上映・報告でした.
(以下福田氏の講演:ただし,記録は金井が行い,文責は金井にある)
上海・福建省は台湾の対岸に辺り,アサギマダラやリュウキュウムラサキなどの迷蝶の発進地としての可能性も考えられ,
非常に重要なところであるが,今まであまり記録がない.少し南の香港の蝶はよく調べられているが,
この記録の空白地帯を調べたいという希望が,やっと今年の4月と6月の旅行で叶った.
訪れる前には,次のように分布しているだろうと考えていた.
・海岸近くの疎林:ルリマダラ類
・郊外の畑や草原:スジグロカバマダラ
・郊外の民家周辺:メスアカムラサキ,リュウキュウムラサキ,コムラサキ
・町中の植え込み:ウスキシロチョウ
・山手に向かうオープンラウンド:アオタテハモドキ
・武夷山山頂付近:アサギマダラ,タイワンアサギマダラ,オウゴンテングアゲハ
(写真の左側参照)
結論から言うと,見事に外れた.
予想していた蝶はほとんど見ることができず,一番の目的であるアサギマダラは姿も見られなかった.
環境をスライドで見てもらい,その後このような結果になった原因を考えてみたい.
(1)4月上海:パック旅行で,ネットを持つこともできない.
町中の街路樹は針葉樹が多く,チョウを期待できない.
ナノハナが終わり近くの気候であった.
山間部の観光地などを回っても,樹木は植栽された二次林がほとんどである.
クスノキ,タイサンボクが多かった.
チョウの姿は,ほとんど見ること無い.
(2)6月中下旬:福州,武夷山(福岡→台湾→香港→福州という遠回りの空路)
福州周辺の鼓山(鹿児島の城山のようなところ)
寺が多い.岩が露出して乾燥気味のところ
武夷山:切り立った岩石でできている1000m以下の山々.
一昔前の日本の農村地帯のような光景で,チョウは期待できるのだが,なぜかチョウの姿薄い.
ヤマトシジミ,アカタテハ,ヒメワモンチョウ,キマダラルリツバメの仲間など.
このような結果に終わった原因として,次のように考えてみた.
(1)時期が悪かった:いい時期を選んだつもりであったが,大陸と島では異なるのではないか?
(2)武夷山の緯度は沖永良部と同じ:蝶の少ない時期なのか?
もっと南の方を探すとなると香港になる.香港は記録が多いので視野からはずしていたが,
迷蝶の時期の記録は少ないのではないか?
以前から期待していた地域だっただけに,この結果は少し残念だが,それ故さらに詳しく調査しなければ
ならないのかもしれない.
以上でした.
質問として出たのは,やはり中国での採集規制に関しての話でしたが,「ネットを持って歩いて密告されるなど,
情勢的に危険極まりなだろう.しかし,ゴミ箱に夜集まった蛾や甲虫は捨てられているし,茶屋の娘さんはチョウを
追いかけて布巾で叩き落とすし,何だか矛盾を感じる」とのことでした.
では,一人一話です.
では,一人一話です.
金井:カバマダラ:南薩山川町のお墓を週一回調査して,変動を観察しています.
墓場内のトウワタ・フウセントウワタを残らずめくって探しています.
6月下旬から見られ始めたカバマダラの卵・幼虫は,8月に入って着実に増えています(OHPでグラフを示す).
ただ,先週から卵寄生蜂に寄生された卵が増えているので,今後の変動が楽しみです.
カバマダラの羽根にマークのある個体には,注意してください.
塚田:前回より参加しています.夜,吉野の周辺ではセミが鳴くのですが,なぜですかね?
レッドデータブック関連で鹿昆にもお話を伺うことがあると思います.どうぞよろしく.
若松:7/20観光で与論へ.アサギマダラ・アオタテハモドキ共に見られず.
木佐貫:カバマダラはお盆過ぎから谷山にいる.
加世田では8/13終令幼虫3匹→20日羽化.9/1は多数産卵有り.
川内久見崎のタイワンツバメシジミ先週はいなかった.今週狙います.
廣森:アオビタイトンボ2♂ 姶良町で採集.
フタホシコオロギ 博物館でを飼っていますが,多くなって大変.もらいに来てくだされば,差し上げます.
ハチノスツズリガ:阿久根にてアシナガバチの5cm位の巣から見られた.
熊谷:皇徳寺のホソバセセリ,7月中旬に多くなった.全国的に少なくなっているとの話を聞くが,
鹿児島の記録をしっかり取るべきかも.
魚見岳にシバハギは多いが,タイワンツバメシジミはいないか? 千貫平の例年のところでは,9/1には出ていない.
来週かな?
指宿商業高校脇のツマベニチョウは,例年多いはずが今年見ない.
先週喜入の生見小学校前にカバマダラ多かった(金井は8/24に見ていなかった).その時の模様は次の通りである.
「9月1日、4時頃、生見小学校前のフウセントウワタ約10本くらいを調べましたが、幼虫は皆無でした。
(食跡が全くありませんでした。)卵はあったかもしれませんが、10から15分程度探しても見つかりませんでした。
それから、226号線沿いのJAの倉庫付近のトウワタも同様に全くいませんでした。(昨年の10月ははたくさんいました)
目撃した数は、同日、午後2時頃、正確には小学校前で同時に3頭、千貫平入り口で1頭の計4頭です。
移動しているカバマダラが同時に4頭もいるのか、不思議に思いました。これは、想像ですが、
付近の食草に同時期に産み付けられた卵から羽化した成虫を見ていたのではないかと思いました。
(付近の住宅の庭にもトウワタなどが植えてあります。)
数年前、鹿児島市でカバマダラが大発生したとき、確か、7月か、8月、1頭の成虫がどこからともなく来て、
半日くらい我が家のトウワタに産卵して、どこかに飛び去ったことを思い出しました。
それから、喜入の墓地にもフウセントウワタ、トウワタがありますが、9月1日時点では全く発生している様子は
ありませんでした。当然ではありますが、皇徳寺の我が家にも9月3日現在、その姿はありません。」
谷山IC近くの河には,タテハモドキが午前中たくさんいる.
秋葉:九重でミドリシジミ類の♀を捕まえ,採卵を試みた.
ハヤシミドリは長生きして好結果を残したが,エゾ・メスアカはうまく産卵しなかった.工夫したのですが,,,
コツを知っている方は,教えてください.
早川:ハッチョウトンボを8月,西の谷で確認.例年より遅れており,数も少ない.
最近は夕方から西の谷で採集している.タイワンクロヤンマ採集.アオタテハモドキ♀を8/2採集
迫田:自宅のハンゲショウに繭が付いた.何でしょうか?(乾燥しないように飼育して,羽化したら調べますよ!:福田輝)
福田輝彦:蛾の中で,特に珍しい・鹿児島で面白い4種類の写真付き手配書を配布.
キュウシュウマエアカシロヨトウ:鹿児島でまだ3頭のみ.分布不明種
シロスジクロホソヤガ:熊本2頭,鹿児島1998年までに28頭採れているが,その後採れていない.
土着or飛来,幼生期,全て不明(大図鑑に未記載)
カワゴケミズメイガ:カワゴケソウを食草にする蛾.
7/21に鹿屋・鳴之尾牧場で1匹灯火に飛来.カワゴケソウも,付近で見つかるか??
キマダラフサヤガ:日本中で鹿児島より3頭だけしか採れていない.
佐々木会長:以前遊びで中国に行き,今日は懐かしかった.時期を選び,今後の新発見に期待します.
田中洋:キオビエダシャク8/4枕崎多かった(食痕も多い)
8/31知覧では見られない.(8/9南日本中央病院での目撃記録有り)
大坪:アオタテハモドキ1♀:7月中旬市比野で採集.
ハラボソトンボ:7月に天文館で見た(←城山に3~4頭との情報有り)
ゴマシジミ:8月に鳥取・岡山で採集を試みる.採集者が非常に多い!!阿蘇では3回行って10匹.今年は少ない.
キマダラモドキ:清和村で採集したが,南限か?
朝日新聞にて「虫の鑑定 1件700円」の記事有り
野田:2週間前フラワーパークに行き,蛾・ツマベニ2匹採集.
湯田平:ご無沙汰です.5月頃は,姶良町の上空をアサギマダラがよく飛んでいます.
山に行くと,スミナガシ,ゴマダラチョウがいます.
山下進太郎:8/23・27・31に開聞町でカバマダラを7匹採集5匹目撃,アオアテハモドキ2匹採集しました.
夏休みに三越で世界のカブトムシ・クワガタを見ましたが,すごい.
江平:市内でのハラボソトンボの記録は珍しいのでは? 霧島の個体は硫黄分のせいか黒っぽい.南西諸島には多い種です.
7/21~8/24までタイへ!笹原氏,高橋龍氏,菊川氏訪れて,感激してくれていた.
中峯:カバマダラ開聞町の入野・松田原では7月下旬から増えた.現在マーク35匹,捕獲したら情報を下さい.
迷蝶は今年少ない.
アオタテハモドキ:開聞で2匹採集,3~4頭目撃盆の南種子では発生していたかも!?
リュウキュウアサギマダラ:大野岳
ツマムラサキマダラ:8/27 開聞岳南側1雄目撃
アマミウラナミシジミ:野間,金峰山で採集
ウスイロコノマチョウ:8/31に1匹採集
ベニトンボ:8/3永吉ダムで♂2匹採集
キオビエダシャク:頴娃町高取は昨年発生したが,最近少ない開聞ふれあい公園のプール脇,フラワーパークに多い.
アサギマダラ:8/4のマーキング調査会では38匹マーク(紫尾)紫尾ではその1週間前も少なかった.
8/23の紫尾も少なかったが,卵・幼虫付いており,今後!
台湾でマークした李さんが9/4~6まで来鹿.
(編集者)「放チョウ者と採集者(中峯氏)の記念写真」は,アルボの1面写真で掲載予定.
田中章:カバマダラ:トウワタを見ているが,鹿児島・鹿屋までもう来ているのでは!?
加治屋:高山高校の昆虫同好会が鳴之尾牧場での合宿に参加.「虫に一生懸命な人たちの姿に感動した」とのこと
井上:カバマダラ:8/25串木野で1♀,9/1には3匹目撃
タイワンツバメシジミ:9/1に3匹採集
最近リュウキュウムラサキのペアリングに凝っており,色々な型が楽しみ.
ウスキシロチョウ:フラワーパークから卵を採集.羽化個体を野外で覆って飼うが,ペアリングは難しい.
(野外飼育ケースは2×3×2.5m)
清水:毎週のようにゴマシジミを取りに行ってました.8/19阿蘇にて5~6匹.
他に,クロヒカゲモドキに卵を生ませた.
以上です.
この後話題になったのはタイワンツバメシジミでした.
例年秋に1回出現が普通だが,食草のシバハギに蕾を付けるに当たって変異があると,それに対応して2~3化が見られるのでは?
とのことでした.7/20に串木野,5月に甑島手打での記録が発表され,「この記録は大切です」との福田先生の言葉でした.
鹿昆総会での皆様の発表を募集しています.
「我こそは!!」という方,是非連絡をお願いします.
金井賢一 viola-kk@po.synapse.ne.jp