3月の例会の話題
種子島で撮影した交尾虫のアブ(2001.V.3)
今回は「スプリングエフェメラル」をテーマに行いました.
前回が参加6名でしたので心配しましたが,今回は21名の参加でした.
以下に福田・田中両氏の指導によるレジメと,それに対する例会での発言(《名前》で示します.)をまとめます.
スプリングエフェメラル
春にしか出てこない昆虫,彼らに対して私たちは次のような印象を持ちやすいものです.
1)採りにくい.採ることに執着してしまう
2)何かおもしろいテーマはあるのか?
では,今年はどんなふうに彼女らを迎えましょうか.
(1)ツマキチョウ:南限は屋久島.山間のレンゲ田,民家の近くなど.
【食草はアブラナ科イヌガラシ,タネツケバナなど.花やサヤ(種子)を好む】
資料*1(福田晴夫.17-20,鹿児島のチョウ.春苑堂出版)
ハタザオなどを刈り取って瓶に挿しておくと,花を食べた個体が蛹になって目立つらしい.
約10ヶ月,時には2年蛹で過ごす.(福田先生から聞いたことがあります.)
《肥後》出水で観察したときにはイヌガラシよりもスカシタゴボウに産卵傾向高かった.
《池田》東市来周辺では逆にイヌガラシを好んでいるように感じる.
《?》2年間蛹で過ごすものの割合はどれくらいか?
《池田》以前10匹飼って2匹は2年目で羽化した.
トラフシジミの春型を飼育したときに,大部分は夏型が夏に羽化したが,一部のものが蛹のままであった.
中をあけて調べてみると春型の羽のものができあがっていた.
《清水》私は夏にその春型羽の個体が羽化してきた.
《金井》蛹の時から羽を作り始めているとすれば,トラフの幼虫の中にもう2種類のものがいるのか?
遺伝的に決まっているものならば,ツマキの蛹も関係あるか?
《池田》いま多数の個体を飼育してデータを取っています.いつか発表します.
《中峯芳郎》サツマの記録から拾ってみると最近の記録ではツマキチョウの記録は減っている.
しかし,個体数減と言うことにはならないのでは??
《福田輝》犬迫にも非常にたくさんいるところがある.
3月には車を止めて採ろうとするが,4月には見守るだけだ.
《?》時期・場所が限られているので,なかなか目に付かない人が多いのでは?
《?》今年は記録をまとめて出すことにより数を計ってみませんか?
4月・5月の例会で採集・目撃記録をまとめましょう.
温暖化が本当に数の減少に関係があるのか,ツマキチョウごときと言わずに
記録をまとめてサツマに書くことにしましょう.
(2)ミヤマセセリ:クヌギ林・コナラ林の林間を飛ぶ.
【食草はクヌギ,コナラ,カシワなど】
資料*2分布図(村上.サツマ83号.1980)これ以後あまり記録増えていない(田中)
鹿児島県植物目録(1986)では.クヌギは県本土に元植栽として存在.
カシワは知覧(永里)野間岬に存在している.
金峰町のカシワ林で見た!!(竹村前会長)
薩摩半島,大隅半島で探してみる価値はある!
《若松》姶良から国分にかけて,山側に行くと疎林にいる.
3月中旬から林に腰を下ろしていると,素早く飛び回る.
《池田》東市来では4月中旬に尾之上先生による記録が大根の吸蜜である.
今年は時期と見る場所を変えてみようか.
最近クヌギは少しずつ増えているように感じるが,ミヤマセセリは見ないです.
《中峯浩司》指宿スカイラインを走ってみると,少し有望なところがある.
今年は少し探してみたいものだ.
(3)スギタニルリシジミ:食草の不思議
【トチノキ(トチノキ科)~キハダ(ミカン科)~ミズキ(ミズキ科)~未見種?猿ヶ城渓谷には3種とも無い】
資料*3(福田晴夫.37-45,鹿児島のチョウ.春苑堂出版)
植物の分布とスギタニの分布がよく重なる.
夏に2回目の発生が極めて稀にあるらしい.(九州ではまだ記録が無い)
記録をもう一度洗うと同時に,新しい産地を見つけてその周囲の食草を探せばイ・ケ・ル!
《若松》奥十層に行けば,非常にたくさんいる.尿トラップで...
《清水》昨年は滝の近くにスギタニだらけだった
《?》南薩は何でもいないイメージがある.スギタニがいるだろうか?
(4)コツバメ
【食草はツツジが有名だが,ガマズミ(スイカズラ科)バラ科,ユキノシタ科などの花・蕾・若い果実など】
資料*4(福田晴夫.20,鹿児島のチョウ.春苑堂出版)
資料*5(田中洋.佳香蝶)
オスは枝で占有行動を示す.日光浴をする姿を見ることがある.
山の尾根沿いなどでもみられ,金井は高隈御岳登山でGWに目撃したことがある.
新燃岳登山道では以前多かったが,最近は少ないとのこと(菊川).
大隅半島は国見岳まで,薩摩半島では鹿児島市の記録があるが,現在は不明.
宮崎県小林市などの平地では3月中旬からがピークであった.
鹿児島市内でも3月下旬から4月上旬にかけて探せば狙えるのではないか?
《肥後》コツバメのいる環境にはよくトラフがいる.
マルバウツギなどを利用しているかももしれない.
《早川》西之谷では3月からも注意してみているが,コツバメを見たことはない.
《?》是非今年は3月中旬からの注意を!
(そのほかの春の昆虫の話題)
《若松》モンキチョウの白型と黄型はまだ調べられていないのでは?
ベニシジミはスイバとギシギシどちらを好むか?
《池田》ミカドアゲハの幼虫を蛹にするとき,黄色の箱の中ではかなり蛹も黄色に.赤の箱の中では普通の緑の蛹であった.
《廣森》他の昆虫でスプリングエフェメラルはいるか?
《佐々木》カミキリではネキが春だけ.他の花カミキリはカエデ,シイと花を変えていつまでもいるのでは?
《福田輝》蛾では冬休みがない.キイロエダシャクなどが春に出るが,
発生期間が長いのでエフェメラルとは....?
《廣森》ビロウドツリアブは3月下旬から4月にかけてでは?
《?》千貫平・トカラなどの南西諸島では8月にも見られると思う.
《早川》西之谷ではGWに見られると思う.
以上,スプリングエフェメラルについてでした.
果たして南薩に彼らはいるのか?ツマキチョウは少なくなっているのか?
4月・5月例会の報告を乞う御期待!!!
では,恒例の一人一話です.
金井:2/12,南薩にカバマダラを求めて行ってきました.
山川港近くの墓場では寄生された黒い卵を1個見るだけでした.
前回成虫を採集した上井手方の墓場では,同じく黒い卵と1令幼虫がトウワタの裏に付いていました.
山下進太郎:1/28山川でトウワタにカバマダラの卵を3個見つけた.
本山:3/1東京科博にて虫入りの琥珀購入.3000万年前のドミニカ産
大9450円,小5250円
中峯浩二:カバマダラの幼虫は頴娃で霜柱の立つ寒波の中で野外観察
終令幼虫行方不明に,3令幼虫現在発育中.
建物の南側陰のトウワタが葉を保つことができる.
アサギマダラの冬の記録
1/21成虫に最後のマーク
2/27新成虫羽化直後のオスにマーク
ヤシオサオオゾウムシ 頴娃町石垣で一昨年発生したらしい.今年見に行くと被害木が放置してあり,
周囲のフェニックスにも被害が見られる.ほかの集落にも衰弱木有り.
キオビエダシャク 頴娃町タカトリ集落 6mのイヌマキ葉全滅.地面に蛹散乱,地中に生きた蛹多し,
今週袋内で羽化した.しかし,発生は局地的で,木一本で異なる.
(肥後)昨年喜界島,口之島イヌマキ葉大打撃.北上するか!?
福田輝彦:2/10~12奄美大島
リュウキュウアサギマダラ昨年の1/3~1/4程度の個体数.珍しく7℃まで気温低下し,
死体も多かったらしい.ただし原因は他にもあるかもしれない.ツマムラサキマダラも見られず,
ジャコウアゲハ昨年よりも比較できないほど少ない.
灯火採集でアマミフトスジエダシャク多数(現地では普通種)
3/2栗野岳にてスジモンフユシャクのメスを10頭確認.
オスは20以上,モミの木で交尾も3例目撃.日没後1時間が勝負!!
冬に灯火採集すると,白布に止まって体温下がって飛べなくなる!?
12/28 指宿で墓石下にカバマダラの蛹発見.
お土産:ヤママユガの卵,入り用の方はどうぞ!
廣森:博物館で3/18までトカラの自然展開催中,是非ご来場を!
宝島でのアサギマダラの冬の経過.
12/26-27数千匹いた.(500匹マーク)
先日宝島でアサギマダラ天候悪かったが80匹マーク.うち,62匹は羽化したての新個体.
1匹だけマークした越冬個体.しかし,12月のうち一匹は伊良部島で再捕獲されている.
島内に残るもの,移動するもの混じっている.
佐々木会長:以前はマキからヒメスジカミキリが出てくると採集のシーズンだった.
しかし,現在は虫の数が減り,それすらもとれない.寂しい限り.
中峯芳郎:吉野台地にはツマキチョウ多い.(昨年は4/10頃)
山側に行けば,ミヤマセセリいるのではないか!?
早川美保子:2/12健康の森でヒメアカタテハ・フクラスズメ採集
2/21鹿児島西駅でモンシロチョウ初見
同 西之谷でタテハモドキ,キチョウ目撃
同 西之谷タイワンエンマコオロギ,タイワンクツワムシ鳴く
2/25伊集院~市来モンシロチョウ数頭目撃
2/27夜,灯火にシャクガ1匹飛来.
台所でメイガ飛び回る.
川添兄弟:カバマダラの幼虫の野外飼育.詳細データにより,サツマに投稿を勧められ原稿提出予定.乞う御期待.
肥後:昨年山下小のニチニチソウにキョウチクトウスズメの蛹多数.しかし美化の先生にうち捨てられた.残念.
ハルニレのカラスシジミの取り方伝授.
木佐貫:1~2月キリシマミドリシジミの卵採集.2個.テクニック教えて!!
熊谷(荒田):2/22知覧でモンシロチョウ初見.ニュースもこの日が多い?
今年のオープン戦はトカラカラスにしようか!?
清水:今年はカラスシジミの蛹に挑戦する予定.
池田:市来に昆虫少年発見.彼はヒオドシチョウを市来で昨年採集.今年は注意している.
若松:3月終わりから4月にかけて,ツマキ・ミヤマセセリの観察会をしよう.
姶良から国分にかけての山側には,クヌギがあればいるはずだ.
井上:昨年串木野でタイワンツバメシジミは一カ所だけ確認.
ツマグロキチョウも10頭しか見ていない.今年は調べたい.
畑にギョボク,シバハギなど多数植えて,調べるつもりである.
以上,一人一話でした.
中峯芳郎氏がサツマの最近の記録を一覧にして用意してくださいました.
鹿児島市のツマキチョウの記録が減っていますが,個体数が減っているかどうか疑問です.
そこで,この春は鹿児島のツマキチョウがどこで見られたかまとめてサツマに投稿しようと言うことになりました.
皆様もご協力ください.目撃・採集記録を5月の例会またはメールにてお寄せいただければ,
データをまとめたいと思います.日,場所,天気などが添えられていると,非常に参考になります.
どうぞご協力ください.
例会報告で中峯浩司さんから放蝶者の不明な再捕獲記録(アサギマダラ)の照会がありました.
もしも心当たりの方がおられましたらご一報ください.
2000年,放蝶者の不明なマーク虫のデータ・・・心当たりのある方はお知らせ下さい。
中峯 浩司 bonobono@ca.mbn.or.jp
表示方法
(上段) マーク ・・・再捕獲日
(下段) 再捕獲地 性別・鮮度・前翅長 備考
1 )KN シ(ミかも?) ・・・7月15日 千貫平
?・新・? 右後翅のみにマーク
2 )カゴ KN 11 ・・・7月16日 千貫平
?・古・? 青ペンで右後翅のみにマーク
3) KN 12 ・・・7月16日 千貫平
♂・中・? 左前翅縮れ
4 )RYU 01 11/4 ・・・11月4日
開聞岳山麓 ♀・古・58mm 11/5にも確認
5) KA 05 11/3 ・・・11月5日
開聞岳山麓 ♀・古・51mm
6 )KA 03 11/3 ・・・11月5日
開聞岳山麓 ?・?・?
7 )KA 30 11/10 ・・・11月11日
開聞岳山麓 ♀・古・?
8 )R11 かいもん11/11・・・ 11月12日
開聞岳山麓 ♂・?・?
9 )R15 かいもん11/11 ・・・11月12日
開聞岳山麓 ?・?・?
JE.b12.12(海老原さんの追加マーク?)あり
10 )ヨ11X1-4ハ ・・・・12月23日
開聞岳山麓 ♂・中・58mm 赤で両後翅に同じマーク
色が薄れている。片方のハは○囲み。
*再捕獲者はすべて中峯,10以外は追加マークして放蝶
1)~9)は県内の方によるマーク? 特に10)が気になりますが,手がかりなしです。