6月の例会の話題
種子島で撮影したオオカギバの幼虫行進(2001.V.5)
6月の例会は知覧町にあるお茶の試験場勤務の松比良邦彦さんに,お茶の害虫「チャノホソガ」
についてお話頂きました.
「チャノホソガ」
お茶の害虫は111種いると言われています.
その中でも3大害虫と呼ばれるのはカンザワダニ,チャノコカクモンハマキチャノミドリヒメヨコバイの3種です.
では今日話すチャノホソガは何かと言うと,基幹防除対象害虫と言うことでチャノキイロアザミウマ,
クワシロカイガラムシの2種とあわせて注目されている.
チャノホソガは大きさ1cm足らず,新芽を加害して品質を落とす被害をもたらす.
特に終令幼虫が葉を巻いたものの中に糞が溜められ,これが製品に入ることによりお茶を赤褐色にしてしまい,
品質がおちる.
防除手段は(1)農薬(2)天敵(3)捕殺(4)その他とあるが,一番的確なのは農薬である.
しかし最近の「環境保全型農業指向」の中で,農薬の散布回数をできるだけ減らす必要が出てきた.
予防的に大量の農薬をまくのでは無く,天候・昆虫・樹勢などから「発生予察」を立て,それに対処する量を
まけばいいのでは無いか,ということで予察するためにチャノホソガを研究した.
チャノホソガは1令~2令が葉の葉肉部分に忍び込む扁平な吸収型,3令~5令が葉を巻いてその中で葉を食べる.
蛹になって繭を作る際には新芽部分から根元の枝の方に移動する.誘蛾灯による数の調査では年に5~6化でるようである.
年によってピークは大きく変化するようであるが,蛹越冬した後に3月から2~3回ほどピークを作った後に
大きなピークがあらわれる.
その後明瞭なピークでは無く,ダラダラとした出現をくり返す.
ただ,新芽の出る1番茶~3番茶などの周期に同調しているようである.
目安としては1平方メートル当たり巻葉数が30個以下になるようにしたい.
この量を保てば被害としてはほぼ認められない.
ただ,数を数える際に誘蛾灯で行うと他の昆虫も混じってしまい,苦労する.
そこで性フェロモンを用いてチャノホソガだけを集めることができれば効率的である.
最近は人工的に合成された性フェロモンが多く作られ,これを使って要予防水準を確立すれば非常に便利である.
調査したことは「1)現地調査-試験場と違いがあるのか」「2)新芽ステージと被害発生の相関」
「3)生存率の推移-捕獲した成虫の量が次世代の幼虫を生み出すまでに,どのような変化をするか」
「4)飛翔能力-刈り取りによってその畑では次世代を作れない.移動分散する力はどうか」という4点である.
知覧町は海抜0mから500mまで変化がある.
一番茶が採取できるのは汐見原4/10から後岳5/1まで開きがある.2)について個体数の調査を行ってみると,
その一番茶の変化が個体の発現周期に同調している.
また4)について,フライトミル(飛翔時間計測装置)を使って,未交尾個体を用いて調べたところ,
限界飛翔距離について11mから1.5kmのバラツキがあったがメスが平均100m前後,オスは平均634mと,
フェロモントラップに来るオスの方が飛ぶ.
しかし,連続飛翔時間はオスメス共に5分程度である.
また,翅長に関して調べたところ,8~9月が一番短く,春と秋が長い.
これは捕獲した10日前の気温と反比例の関係にあると思われる.
すなわち,気温の上昇が翅長の低下をもたらし,飛翔距離に影響を与えると思われる.
今後防除の方法として,農薬の散布時期を判断することがポイントである.
ハラナガミドリヒメコバチなどの 天敵なども考えられるが,なかなか導入が難しい.
<質疑応答>
フェロモンは何種類ぐらいあるの?入手は?
ハスモンヨトウや(フェロモンでは無いが)ドウガネブイブイなどある.
入手先は(財)日本植物防疫協会のみが扱っている.(個人ではどうか?)
チャノホソガは,蛾類大図鑑ではチャノハマキホソガでは??害虫名もある.
では,一人一話です.
まずは先日の一人一話で大きく話題となったのは,今年の昆虫の少なさについてです.
神園 香:今年は非常に蝶が少ない.開聞岳のモンキアゲハ,カラスアゲハ,グミの花にぶら下がるジャコウアゲハ.
例年見られる光景がまるで無い.ムラサキシジミの幼虫もマテバシイに少ない..皆さんはどうですか?
福田輝彦:蛾も非常に少ない.
ライトトラップでも,天気や温度などいいコンデションの日でも白布にやってくる蛾の量が少ない.
廣森さん:先日ツマグロヒョウモンの幼虫を博物館で使おうとしたが,数をそろえるのに非常に苦労した.
今までいた花壇の植え込みや鹿大入来牧場などでも全然とれなかった.
中峯さん:ツマグロの幼虫は頴娃高校の花壇でもいない.
金井:武岡台でもあまりいないと思います.
湯田平さん:姶良町も少ないです.
森永くん:ハチの採集に行っても,最近は10匹程度しか採れなくなってきた.
季節が悪いのか,最近は標本整理ばかりです.
<<<お願い>>>九州以外でもこのような現象が見られると聞きます.
鹿児島以外の会員の皆様,お近くの現状を教えて下さい.
<連絡先>金井 viola-kk@po.synapse.ne.jp
次回の例会で皆さんに紹介したいと思います.
その他の話題は以下の通りです.抜けているものがあれば,お許し下さい.
福田晴夫:子宝島に行ってきました.在住の岩下さんが良く調べています.
49種類の蝶が確認されているが,うち27種は迷蝶である.カバマダラは成虫幼虫見られず.
ツマムラサキマダラは見るが,食草のリュウキュウテイカカズラが見当たらない.
キョウチクトウに食痕も無い.キョウチクトウスズメもいない.
先日南風が吹いたが,とたんにウスコモンマダラが来たそうである.
ミツムラくん:GWに猿ガ城渓谷(垂水)にトラフシジミを探したが,ダメだった.
(福田)市来町のダムにも産地がある.ウツギのつぼみを見れば,今頃夏型の幼虫がいるはずです.
中峯さん:紫尾でとったクレソンから,スジグロシロが羽化しました.
今の季節,モンシロチョウよりもスジグロシロの方が多いように感じます.
長崎鼻フラワーパークでアサギマダラのマーキングをしました.
緑色のスタッフジャケットを着せられましたが,48匹マークしました.
ツマムラサキマダラの新鮮メスを取りました.サツマに書きます!!?
その後千貫平に行きましたが,アザミなどの花が無く,蝶いない.
田中洋さん:引っ越しで大変でした(電話は変わりません).
桜ヶ丘のサンゴジュにサツマシジミの幼虫を見ました.
佐々木会長:これからアカメガシワの花に来るハナカミキリが楽しみである.
松比良さん:川内久見崎の採集会は近年稀に見る大盛況でした.
今年の九州トンボ談話会は対馬であります.行ってきます!!
川添兄弟:キアゲハ,ツマグロヒョウモン,ウスタビガを飼育しています.
ウスタビガの蛹を持参.明るい環境のおかげで緑の蛹であった.
ちなみに,家内が台所で飼育した3匹は全て黄色(茶色??)であった.
湯田平さん:先日の久見崎ではテングチョウ,イチモンジチョウを採集しました.
久見崎で見つけた蛹からは(夜中のうちに)ヒメアカタテハが羽化しました.
5/20,城山を歩いているとテングチョウが5匹ほど
足にまとわりつくように飛びました.(現在は今年の一化目)
野田くん:5/3 三重岳でアゲハ,キアゲハ,モンキアゲハを採集
5/20 田上でキアゲハ,ナガサキアゲハを採集しました.
今村さん:目標だったムカシトンボの羽化写真にとれた.13時ぐらいに羽化.遅い!
サラサヤンマの交尾写真もとれた.
オオカワトンボ:新産地として国分・吾平確認.実際もっとあるかも!?
川の中でも結構局地的にいるのでは無いか?
オオギンヤンマ:鹿屋で羽化殻採集.近所でギンヤンマ系の羽化殻には注意.
久見崎ではヨツボシトンボが大発生!!
ヒメサナエ新産地見つけた. キチョウメスのの先端に黄色の紋入っていた.
田中章さん:鹿屋のタイサンボクでミカドアゲハの幼虫を採集.現在3令,遅いのでは?
福田輝彦さん:犬迫小でアカメガシワの葉を食べるシジミの幼虫採集,今蛹になった.
なんだろか?(ヤクルリの幼虫が広食かな?)
ツマベニの幼虫4匹持ってきました.よろしかったらお土産に!!
本山さん:久見崎でタベサナエ,クロイトトンボ採集.里山環境にびっくりしました.
東京上野,国立科学博物館にて虫入りのコハクを購入しました.
第三紀(約3000万年前),ドミニカ共和国産
早川さん:5/29西ノ谷のキブシでオオコメエダシャクの終令幼虫2匹捕獲.
飼育中,6/2蛹化準備.他に10日前にフクラスズメ5匹蛹化.
6/1家の前にテングチョウ6匹飛来.2頭捕獲.10分ほどで飛び去る.
ルリシジミ,イシガゲチョウ多し,アカタテハ,ヒメアカタテハ,モンキチョウ採集.
6/2 ウラギンシジミメス採集.
5/28 信義くんが,東市来でホタルガ一匹採集.
その後,8/19(土)に行われる蝶類学会と共催のバタフライフォーラムについて打ち合わせがありました.
係りなどは次回の後に決めますが,参加は申し込み制にします(会場の確保のため)ので,予定を空けておいて下さい.
では.